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グラデーションオーシャン

新しい本を執筆しました。                                  2025/1/26

久しぶりに患者様にお伝えしなくてはと思いここにUPしました。

女性の閉経周辺期から閉経にまつわる問題の解決の手引きとして、4冊目の本を書き上げたところですが、最後の“終わりに”の1部とまとめをご紹介します。

​書籍が発行されましたら、改めてお知らせいたします。

更年期患者さんを診察して20数年、最近の毎月の新患は30人、毎月のホルモン補充療法(HRT)を実施している方は400人、多くは月1回の受診ですが、遠方から来ていただいている方は3か月に1度、比較的近い方は2か月、初診から6か月~12か月の間は薬の作用や注意点などの治療内容を熟知していただくため毎月1度の受診をお願いしています。

特に最近の10年間では約10,000人の中年・更年期の女性が関節の痛みで訪れていました。

この本を書き終えるにあたって、何を言いたいのかをもう一度確認しておきたいと思います。

日本ほどホルモン補充療法を活用していない国はありません。オーストラリアでは、女性の生涯でのHRT施行率は60%近くだといわれています。その年だけで見ても15%程度です。日本の施行率は明かにされていませんが、生涯に一度でも行ったことのある方が10数%、単年度では1.6%程度で、極端に低いのです。この原因は2002年にアメリカの有名な医学雑誌であるJAMAで報告された論文が大きく影響しました。乳癌、子宮体癌、血栓症が増えるという内容でした。詳細はここでは記述しませんが、この論文は20年以上前の古い論文であり、現行のホルモン補充療法とは使われている薬剤も全く違うものです。最近ではホルモン補充療法を受けた患者さんは生涯にわたってがんで死亡する率は低いことが報告されています。日本でもそのような調査研究を行えば、女性の大腸癌(結腸癌)が減少する結果が得られることが考えられます。

 

とりわけ重要な点は、現在の医療では、中年女性の関節症状に対して適切に対処していないことです。おそらく年間で、40~60歳の女性1,000万人近くの方が手の痛み、手のこわばり感を感じています。その半分は、治療しても改善されず医療機関を転転とめぐっている状態だと思われます。閉経になって数年たつと症状はさらに悪化し、寝たきりの状態になる方もおられます。多くは腱鞘炎、変形性関節症の所見が見られ、線維筋痛症に類似しています。リリカ(ブレカバリン)、タリージェ(ミロガバリン)、トラムセット(トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合錠)などが投与されますが、効果が認められず、本人は自分の症状は更年期からきているのでは?との思いで来院されます。このような方にホルモン補充療法を行いますと、大変よくなられる方を多数経験しています。線維筋痛症と、更年期障害の筋関節型の重症例は鑑別が難しいこともありますが、まずはホルモン補充療法を先行することが大事だと思います。

 

さらに頻度が高いのは単なる更年期の関節症、腱鞘炎です。この疾患もホルモン補充療法の実施が鑑別に役立ちます。そもそも女性の関節症状を診察する医師に、ホルモンの揺らぎ、あるいは欠乏が関節症状に関連するという知識がないと、ホルモン補充療法を行うところにはたどり着きません。リウマチ専門医は、女性のホルモン補充について関心がうすいので、紛らわしければ、まずはリウマチの治療を先行します。そして効かなければ次々と薬を変更していきジレンマに陥ります。患者さん自身が更年期障害ではないかと気づき、どのように対処すべきかを知っておくことが必要です。そのためにこの本では、その情報を提示しました。大学病院は、先進的な医療を遂行することが役目であり、更年期の関節症状に勢力をつぎ込む余裕がないのでしょう。そういう意味で、開業医にその役割を果たすことが求められていると考えます。

 

最後に、他院で関節リウマチと誤診され、当院を受診した典型的な症例をまとめてみました。

似たようなご経験のある方は、是非、ホルモン補充療法をご検討ください。

 

  • 婦人科の先生が5年間でホルモン補充療法を突然中止した。その後数カ月以内に朝のこわばり、手指関節節の痛みが出現した。通常リウマチ反応陰性, 抗CCP抗体陰性、CRP陰性であれば関節リウマチは否定的だが、CRPが少し高い(0.5~1)と関節リウマチと診断される場合がある。

  • 40歳代で関節リウマチと診断、十分なメトトレキサートで完全緩解。しかし閉経になり手指関節が痛くなってきた(滑膜の肥厚なし)。生物学的製剤を投与、無効であった。別の生物学的製剤に変更。患者さんがこれはおかしいと今の治療を疑問に思う。

  • 抗CCP抗体高値、リウマチ因子高値で、閉経となり5~10か所の手関節の痛みが出現。CRP陰性、関節エコーで異常なし(滑膜の肥厚なし、腱鞘炎、変形性関節症の初期)。

鶴見西口更年期リウマチ科クリニック 院長 宮地清光

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